シロアリの女王は寿命が長い!卵を産み続けて最後は共食いの対象に…
シロアリは階級ごとに役割を分担して生活する社会性昆虫で、繁殖を仕事とする女王アリを頂点に群れを形成しています。
女王アリは1日に数十個~数百個の卵を一年中、毎日産み 続けています。寿命は10年ほどと長く、遺伝子的な寿命でいえば数十年にもなります。
つまり、シロアリに住みつかれると大繁殖し、何年にも渡って建物が食害されてしまうことになるのです。
女王アリの特徴やシロアリの社会構造を知って、シロアリ被害から建物を守りましょう。
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目次
シロアリの女王アリとは?見分け方と特徴
女王アリのおもな仕事は産卵です。オスの王アリとペアになって繁殖をおこない、一年中卵を産み続けます。
1匹の女王アリの産卵数は1日あたり数十個~数百個だといわれており、一生のうちで百万個もの卵を産む個体もいます。しかも、シロアリの女王は1つの巣に1匹というわけではないので、群れ全体では1日に1~5万個の卵が産まれることもあるのです。
これだけの数を産卵するため、女王アリは大きな体をもっています。大きさだけでもほかの階級のシロアリとの見分けはつきやすいですが、腹部に卵を蓄えた状態ではさらに特徴的な見た目になります。
お腹の中にぎっしりと卵がつまった女王アリは、15~40mmもの大きさになることもあるのです。ほかの階級の大きさは3.5~10mm程度なので、その差は歴然ですね。
白くてブニョブニョした女王のお腹を潰すと、たくさんの卵が出てきてしまいます。見つけても不用意に潰さないように注意してください。
シロアリの卵の大きさと見た目
女王アリのお腹に入っている卵は、どれくらいの大きさでどのような形をしているのでしょうか。日本でもっとも生息数の多い「ヤマトシロアリ」を例にご紹介します。
ヤマトシロアリの卵は0.4~0.6mm ほどの大きさで、だ円形をしています。うっすらと透き通った白~クリーム色で、表面にツヤがあるのが特徴です。
シロアリの卵が孵化するのにかかる日数
産み落とされたシロアリの卵が孵化するまでにかかる期間は、通常およそ30~ 90日です。つまり、シロアリに住みつかれると、少なくとも3か月以内に数十から数百のシロアリが誕生することになります。
シロアリの女王アリは毎日産卵するので、最初に産んだ卵が孵化すれば、その後は1日あたり数十から数百単位でシロアリが増え続けると考えてよいでしょう。
女王を支えるシロアリの階級
シロアリは階級ごとに役割分担がしっかりと決まっている社会性昆虫です。女王・王を頂点とし、それを支えるようにニンフや兵蟻(へいぎ)、職蟻(しょくぎ)という階級が存在しています。
階級 | 役割・特徴 |
女王アリ・王アリ | オスとメスがペアになって繁殖をおこなう。職蟻が誕生すると生殖に専念し、毎日卵を産み続ける。 |
副女王アリ | 二次生殖虫。女王とともに生殖をおこなう。女王がいなくなると、跡を継いで女王になる。 |
羽アリ | 新しいコロニーをつくるために巣立つ次世代の女王・王の候補。 |
ニンフ | 羽アリの前段階。羽が生えるまでは職蟻とともにエサ集めや巣の拡張をおこなう。 |
兵蟻 | 兵隊アリ。おもに防衛をおこなう。シロアリの種類によって、攻撃をするものや危険を知らせるだけで戦わないものがいる。 |
職蟻 | 働きアリ。ワーカーとも呼ばれる。エサ集め、女王アリの世話、巣の拡張・補修など、コロニーの存続に関わる仕事全般をおこなう。 |
シロアリの成長過程は特殊!大半は一生幼虫のまま
一般的に昆虫は、卵から幼虫になり、成虫へと形態を変えていきます。途中でサナギになるもの、ならないものの違いこそありますが、卵から成虫までの道筋というのはそれぞれひとつに決まっているものです。
しかし、シロアリは巣の中の状態に合わせて、どの階級に成長するかが変わるという特徴をもっています。しかも、兵蟻や職蟻は幼虫であり、幼虫のままで一生を終える個体のほうが多いのです。
シロアリの成長過程は下図のとおりです。
卵 | ➡ | 初齢幼虫 | ➡ | 職蟻(多齢幼虫) | ➡ | 職蟻(終齢幼虫) |
➡ | 兵蟻 | |||||
➡ | ニンフ |
卵からかえったシロアリは「初齢幼虫」と呼ばれるごく小さい時期を除いて、すべての階級が役割をもって働いています。
ニンフは成虫である羽アリへと成長します。
副女王アリになる個体は上記の図とは別に、卵の段階から副女王アリになる個体として産み分けられています。副女王アリの生まれ方については「女王アリが死んだらどうなる 」の章をご覧ください。
シロアリの寿命は長い!女王アリ・王アリの寿命はさらに長い!
シロアリはほかの昆虫に比べて寿命が長いことで知られています。
数か月~1年で寿命を迎えて世代交代をする昆虫も多いなか、シロアリは職蟻や兵蟻でも2年程度は生きるのです。女王アリの寿命はさらに長く、10~20年あるといわれています。
そしてもっとも寿命が長いのが王アリです。ほかの昆虫では、オスは交尾が終わると命が尽きてしまうものがほとんどですが、シロアリの王アリはなんと数十年も生きるのです。
このようにシロアリが長寿なのには、活性炭素を制御できることが関係しています。活性炭素は生き物の老化の原因となる物質ですが、シロアリは不要な活性酸素を無害化することによって老化を遅らせることができるのです。
女王アリが死んだらどうなる?
寿命を迎え、役目を終えた女王アリはほかのシロアリのエサとなります。残酷な最期に思えるかもしれませんが、シロアリの世界ではごく普通のことです。
女王アリに限らず、どの階級のシロアリも死んだあとは仲間に食べられます。兵蟻にいたっては、寿命を迎えたときだけでなくエサ不足のときにも共食いの対象となるのです。
そして、女王アリが死んだあとの巣では、副女王アリが新たな女王となります。
副女王は、単為生殖で生まれたメスのシロアリです。「単為生殖」とはオスの精子と受精しない生殖方法で、メスの遺伝子のみを受け継いだ個体が生まれます。
職蟻や兵蟻、ニンフとなる個体は有性生殖(オスの精子と受精する)で生まれ、巣の状況に合わせてどの階級に成長するかが決まります。しかし、副女王は副女王になるために、純粋な女王の遺伝子を受け継いで生まれてくるのです。
つまり、巣を創成した女王アリは、肉体が滅んだあとも遺伝子的には生き続けているといえるでしょう。
近年の研究では、女王アリが死んだあと、王アリが副女王アリのホルモンに働きかけて新たな女王アリの誕生を促していることがわかりました。
シロアリが集団で生活できるのはフェロモンのおかげ
新たな女王アリの誕生や、職蟻から兵蟻やニンフへの成長の決定にはフェロモンが関係しています。また、シロアリは暗闇で生活し、羽アリ以外は視力をもたないため、仲間との意思疎通もフェロモンを使っておこなっています。
現在確認されているシロアリのフェロモンは、以下の6つです。
フェロモン | 特徴 |
女王フェロモン (階級分化調節フェロモン) |
女王アリが分泌する揮発性のフェロモン。 ほかのシロアリの生殖を抑制し、新たな女王が誕生しないようにする働きがある。 |
卵認識フェロモン | 卵から分泌されるフェロモン。揮発性はない。 卵を卵と認識させて、職蟻が世話をするように促す働きがある。 |
兵隊フェロモン | 兵蟻が分泌する揮発性のフェロモン。 職蟻が兵蟻になるのを抑制する働きがあり、兵蟻の数を調節している。 |
性誘引フェロモン | 羽を落としたメスの羽アリが、オスの羽アリを誘うフェロモン。 この働きによって、王アリが女王アリのあとにぴったりとくっついて歩く「追尾行動」が起こり、つがいになることができる。 |
道しるべフェロモン | 職蟻が分泌するフェロモン。仲間に自分の場所を教えることで、集団行動を可能にしている。 ボールペンで書いた線の上をシロアリがたどるという実験が有名。これは、ボールペンのインクを乾きにくくする物質が、道しるべフェロモンと似ていることによる現象。 |
警報フェロモン | 仲間に危険を知らせる揮発性のフェロモン。 |
このように、シロアリはフェロモンによって階級の割合を調節したり、仲間とコミュニケーションをとったりしているのです。
女王アリ・王アリ・卵まで残さず駆除しよう
シロアリは階級ごとの個体数を変動させながら、複雑な社会を築いています。とても小さく繊細な生き物だからこそ、集団で補い合って暮らしているのです。
そのため、職蟻や兵蟻の一部を退治したとしても、ほかの個体に役割が引き継がれて巣は存続していきます。階級のトップである女王アリにさえ、代わりはいるのです。
王の二次生殖虫である「副王アリ」はめったに生まれないことから、駆除の際には王アリを狙うとよいという説もあります。王がいなくなれば職蟻や兵蟻、ニンフはそれ以上増えなくなり、巣は衰退していくと考えられるためです。
ただし、女王アリは単為生殖をおこなうことができるので、王だけを駆除してもすぐには全滅しません。卵が残っていれば、新たな個体の孵化も続くでしょう。隠れた巣の中から王アリを見つけ出し、ピンポイントで駆除するというのも難しい話です。
シロアリ被害を食い止めたいのであれば、やはり徹底的な駆除が必要だといえます。
駆除は薬剤散布か毒エサで
基本的にはどの階級のシロアリも同じ駆除方法で、薬剤散布や毒エサの使用が一般的です。
薬剤散布は、直接有効成分を吹きかけることですばやくシロアリを駆除できる方法です。毒エサは、シロアリが仲間にエサを分け与える習性を利用して、巣ごと駆除することができます。
孵化前の卵も、薬剤を吹きかければ駆除することが可能です。また、毒エサで職蟻が死滅すれば、たとえ卵からかえっても世話をしてもらえずに死んでしまうということが考えられます。
ただし、薬剤散布で確実に駆除するためには、巣の場所を特定して群れの全容を把握しなければなりません。これは、知識や経験が豊富なプロでなければなかなか難しいことです。また、毒エサにうまく食いつかせるのにも、シロアリの生態に関する知識や駆除の経験が欠かせません。
複数いる女王アリをすべて逃さず駆除するためにも、施工はプロに任せることをおすすめします。被害が気になる方は、まずは床下調査だけでも受診してみてはいかがでしょうか。弊社にご相談いただければ、無料で調査可能な業者をご紹介いたします。
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編集者情報

鈴木宏則 シェアリングテクノロジー株式会社 シロアリ110番 編集長
2015年より編集者としてシロアリをはじめとした害虫駆除に対する記事、100本以上の執筆に携わる。現在も編集者として活動、記事の構成・執筆・現場取材など様々な業務に従事。